ガバナンス
1990年代中頃、NIFTY Serve(富士通社が運営していたパソコン通信サービス)のオンライン掲示板に集まった東京、愛知、神戸、北海道、デンマークなどに住む中学生たちが、自らを「ユニバースソフトウェア」と名付けたのが、UNIBA INC.の始まりです。2003年に法人化した「ユニバース」はやがて「ユニバ」と呼ばれるようになり、2006年に正式名称を「UNIBA」に改めました。
UNIBA INC.の自治を重視する伝統は、学生たちが自らを集団として自覚した瞬間から始まっています。何かを達成する手段として生まれたのではなく、可能性に開かれた、自由な空間を作ることがその目的でした。そのためには、全体と個人がバランスをとるために負担を分け合い、互いに自由であることが重要だったのです。それは少しずつ私財を出し合って株を保有する、現在のコミュニティとしての株式会社の在り方や、その他の素朴な手作りの制度、集団として独自のマナーを獲得していくことにつながっていきました。
2021年4月には、理想に近いフレームワークとして、ホラクラシーを採用することにしました。
2030年のUNIBA INC.
90年代から、一つのチームとして運営されてきたUNIBA INC.ですが、現在は、複数チームが共存する体制に移行しています。2030年には、10チーム以上がひしめく、作り手の大集団になることを目指しています。
ソフトウェアを書く人が力を発揮したり、経験を積んで成長していくためには、さまざまな条件を揃えなければなりません。インターネットやコンピュータはそこかしこに存在し、ポテンシャルもそこにあるのですが、それらを価値あるものと結びつけるのは、人の創造性です。創造を可能にするものは何かという探求に終わりはありませんが、学生の集まりが、ソフトウェアを生み出すひとつの企業になるまでにさまざまな苦労をしながら理解したのは、成功や失敗を還元する先として、チームが継続的に存在することの重要性です。チームが可能にする進歩、成長、そして失敗を受け入れるキャパシティがなければ、UNIBA INC.はもっと前に終わっていました。UNIBA INC.を可能にしたのは、たくさんの気づきと失敗と、それを受け止めたチームだということです。
チームは、さまざまな資源を必要とします。ゼロから資金や設備を集め、オペレーションを作り出すことは簡単ではありませんが、それらがなければ、チームが本当に実現したい価値に近づくことはできません。UNIBA INC.は、さまざまなチームヴィジョンを実験する器として歩み始めました。そこでは、チームそのものが立ち行かなくなっても、本当の意味の終わりではないのです。ひとつのチームヴィジョンの行き詰まりは、新しいチームにとっての学びになるはずです。多くのチームの誕生と終わりを経験することで、さらに魅力的なチームが可能になるでしょう。そして魅力的なチームの誕生は、成長を目指す作り手にとっても、その力を必要とする人にとっても、有益なものとなるでしょう。